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生成AI研修に使える助成金。人材開発支援助成金の活用法

生成AI研修に使える助成金。人材開発支援助成金の活用法

生成AI研修に使える代表的な助成金は、厚生労働省の「人材開発支援助成金」です。要件を満たせば、訓練経費と訓練期間中の賃金の一部が助成されます。AI研修を入れたいのに予算が通らず助成金の可否から調べ始めた方へ、対象コース・助成率と限度額・申請の流れ・要件に合う研修と合わない研修の差を、2026年7月時点の公式情報でまとめます。

僕はAIVESTという会社を経営しながら、非エンジニアの経営者・実務担当に向けてClaude Code(Anthropicが提供するAIエージェント。指示を渡すと自分で調べ、作業し、成果物まで作るAI)の講座を主催しています。説明会では「補助金は使えますか」と毎回のように聞かれます。この記事では公式要件に加えて、要件に合う研修と合わない研修の差、申請で詰まりやすい点まで書きます。

生成AI研修に使える助成金とは。結論は人材開発支援助成金

人材開発支援助成金は、事業主が雇用する労働者に職務に関連した専門的な知識・技能を習得させる訓練を計画に沿って実施した場合に、経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。生成AIの研修は「新たな分野で必要となる専門的な知識・技能」に当たり得ます。ただし「生成AI研修だから対象」ではなく、訓練の設計が要件に合っているかで決まります。 支給の可否は労働局の審査です。

研修を選ぶ前に、4つの前提を確認する

公式チェックリストの共通要件は次の4点です。

  1. 申請事業主が雇用保険適用事業所の事業主であること

  2. 対象労働者がその事業所の雇用保険被保険者であること

  3. 研修や人事の担当課長などを職業能力開発推進者として選任していること(未選任なら計画届の提出日までに選任)

  4. 事業内職業能力開発計画を策定し、労働者に周知していること(未策定なら計画届の提出日までに策定・周知)

3と4は、書類自体が社内に存在しない会社が多い項目です。ここが未整備のまま見積もりを集め始めると、申請の段階で止まります。

どのコースが生成AI研修に当たるのか。候補は2つ

公式ページに掲載されているコースは7つ。生成AI研修に関係するのは主に次の2つです。

候補1. 事業展開等リスキリング支援コース

新たな分野で必要となる知識・技能を習得させる訓練が対象で、3類型に整理されています。

  • ① 事業展開にあたり新たな分野で必要となる専門的な知識・技能を習得させる訓練(事業展開は訓練開始日から3年以内に実施予定、または6か月前までに実施のもの)

  • ② 企業内のデジタル・DX化やグリーン・カーボンニュートラル化に関連する業務に必要となる訓練

  • ③ 人事・人材育成計画に基づき、今後従事予定の職務(訓練開始日から3年以内)に必要となる訓練

生成AI研修で現実的なのは②です。新規事業がなくても社内業務のデジタル化の文脈で説明できます。パンフレットにはDXの定義も明記されています。

ビジネス環境の激しい変化に対応し、デジタル技術を活用して、業務の効率化を図ることや、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。(厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内」より)

「ChatGPTの使い方を覚える」ではなく「どの業務をどう変えるか」で設計する必要がある、ということです。なおこのコースは令和8年度末までの時限措置と明記されています。中期の育成計画に組み込むなら最新情報の確認が必要です。

候補2. 人への投資促進コース(定額制訓練)

デジタル人材・高度人材の育成、労働者の自発的な訓練、定額制訓練(サブスクリプション型の研修サービスによる訓練)などを扱うコースです。集合研修なら候補1、eラーニング型サービスを面で入れるなら候補2が目安です。

人材開発支援助成金で生成AI研修が対象になり得る2コースの比較図

いくら助成されるのか。助成率と限度額の読み方(2026年7月時点)

以下は厚生労働省「事業展開等リスキリング支援コースのご案内(詳細版)」の記載で、内容は令和8年5月14日現在。カッコ内は中小企業以外の場合です。

助成率の「75%」は無条件の数字ではない

事業展開等リスキリング支援コースは、賃金助成が1人1時間当たり1,000円(500円)、経費助成率75%(60%)、設備投資加算が導入費用の50%人への投資促進コース・定額制訓練は経費助成率60%(45%)で、賃金要件等を満たす場合は75%(60%)です。

見落とされやすいのは、この75%が「賃金要件等を満たす場合」の欄の率であることです。賃金要件等とは、訓練修了後の賃金比較で5%以上上昇、または資格等手当を就業規則等に規定して支払い前後の比較で3%以上上昇した場合の加算要件です。「経費の75%が戻る」は、賃金を上げる前提とセットの数字です。

限度額。1人1訓練でいくらまでかを先に見る

経費助成の限度額(1人1訓練・定額制サービス以外)は訓練時間の区分で変わります。

  • 中小企業事業主: 10時間以上100時間未満で30万円 / 100時間以上200時間未満で40万円 / 200時間以上で50万円

  • 中小企業以外の事業主: 同じ区分で20万円 / 25万円 / 30万円

  • eラーニング及び通信制による訓練等: 中小企業15万円・大企業10万円(通学制や同時双方向型と組み合わせる場合も含む)

  • 定額制サービスによる訓練: 1人1月あたり2万円

このほか賃金助成の限度時間は1人1訓練で1,200時間、受講回数は1労働者につき1年度3回まで、1事業所が1年度に受給できる額は1億円までです。

研修設計を最も左右するのはeラーニングの限度額です。録画教材中心で組むと、限度額が中小企業で15万円まで下がります。 助成率だけ見ていると、ここで頭打ちになります。

ポイント

本記事の数字は厚生労働省のパンフレット(令和8年5月14日現在の内容)を2026年7月時点で確認したものです。パンフレットにも「訓練の内容などによって、事案ごとに判断が必要となる場合があります」と明記されています。実際の可否と金額は必ず管轄の労働局またはハローワーク、および社会保険労務士に確認してください。

助成率と経費助成限度額の読み方を整理した図

助成金の要件に「合う研修」と「合わない研修」の差はどこにあるか

制度解説だけの記事では埋まらないのがここです。提供する側から見ると、差ははっきりしています。

差は「時間」「形式」「職務との関連」の3点

業務命令で受講させる場合の要件は、訓練時間数が10時間以上(eラーニング・通信制は標準学習時間10時間以上または標準学習期間1か月以上)、OFF-JTまたはOFF-JTとOJTの組み合わせ、対象労働者の職務に直接関連する訓練であること。支給されない例には、実訓練時間数が10時間未満の場合や、所定労働時間外・休日(振替休日は除く)に実施された時間の賃金助成があります。

つまり外れやすいのは、2時間の単発セミナーを積む形、業務時間外の自主参加にする形、「AIとは何か」で終わって受講者の職務とつながらない形です。この3つは満足度が高くても要件からは外れます。「良い研修か」と「要件に合うか」は別の物差しだ、ということです。

講師側は、助成金を前提にすると設計をこう変えている

要件を意識するとき、僕が設計で変えているのは次の3点です。

  1. 単発の積み上げをやめ、最初から時間で設計する。10時間以上は「1回で終わらせない」ことの要求と同義。カリキュラムと時間割を先に確定させます

  2. 録画教材だけで組まない。限度額もありますが、eラーニングだけでは職務に当てはめる時間が取れません。同時双方向のワークを混ぜます

  3. 事前ヒアリングで受講者の職務を集める。「職務に直接関連する訓練」だと説明するには、誰のどの業務を題材にするかを先に決めるしかありません

3つとも助成金のためだけの工夫ではなく、そのまま「受講後に現場で使われる研修」の条件と重なります。

「これ、助成金の要件に入りますか」と聞かれたとき僕が返すのは、「時間・形式・職務との関連の3点なら設計で寄せられます。でも支給の可否は労働局の判断なので、社労士さんと確認してください」です。ここを混ぜて答えると、後で誰も責任を取れなくなります。

研修そのものの選び方は比較記事に、カリキュラムの組み方は非エンジニア向けAI研修のカリキュラム設計にまとめています。

関連記事【2026年】法人向け生成AI研修おすすめ比較。失敗しない選び方法人向け生成AI研修は各社の違いが見えにくく、物差しのないまま選ぶと受講後に使われない研修になりがちです。講座を主催する講師側の視点で、選定基準5つと主要サービスの統一項目での比較(2026年7月時点)を解説します。

申請の流れ。最初の締切は訓練開始の1か月前

最初の締切は「支給申請」ではなく「訓練開始の1か月前までの計画届」です。ここを過ぎると、どれだけ良い研修でもその回は対象外になります。

社内の前提を整える

雇用保険適用事業所であること、推進者の選任、事業内職業能力開発計画の策定と周知。未整備なら計画届の提出日までに済ませます。

研修を要件に合わせて確定する

実訓練時間10時間以上・OFF-JT・職務に直接関連の3点で、カリキュラム、時間割、受講者、経費見積もりを固めます。

職業訓練実施計画届を提出する

訓練開始日の6か月前から1か月前までの間に管轄の労働局へ提出。定額制サービスやeラーニングは契約期間の初日の1か月前まで。

訓練を実施する

計画どおりに実施し、実施記録を残します。変更する場合は定められた期日までに変更届を提出します。

訓練経費を全額支払う

支給申請日までに事業主が経費を全額負担していることが要件です。

支給申請を行う

訓練終了日の翌日から起算して2か月以内。この期限を過ぎると支給されません。

カリキュラムと時間割と見積もりが揃わなければ計画届は書けません。実務上の締切は訓練開始の2〜3か月前です。

計画届から支給申請までのスケジュールと締切を示した図

申請で詰まりやすい5つのポイント

締切・資金繰り・形式の3つ

1. 計画届の締切と支給申請の締切を混同する。前者は訓練開始の1か月前まで、後者は訓練終了の翌日から2か月以内。研修を決めてから助成金を調べ始めると、計画届の期限を過ぎていることがあります。

2. 後払いであることを見落とす。会社が先に全額を払い、あとから助成される流れです。僕が受けたAI導入の相談でも、枠は決まっているのに立て替えのキャッシュフローがネックになり、進め方を組み直したことがありました。助成金は値引きではなく、後から戻ってくるお金です。

3. eラーニング中心に寄せて限度額が下がる。運用は楽ですが、限度額が中小企業15万円・大企業10万円になり金額面では不利です。

誰が申請するのか、記録は残っているか

4. 研修会社が申請を代行してくれると思っている。僕の講座の説明会でも毎回出る質問です。僕たちが出せるのは、カリキュラムや料金が分かる書類、パンフレットといった「研修の実体を示す資料」まで。労働局に出す申請書類そのものは作りません。申請主体は研修会社ではなく、受講させる会社(事業主)です。

5. 実施記録が残っていない。計画どおり実施した記録は支給申請で必要です。オンライン研修は出席や受講時間の記録があいまいになりがちなので、研修会社に何が出せるかを事前に確認してください。

助成金ありきで研修を決めると、なぜ失敗するのか

助成金の情報を集めるほど、順番が逆になっていく会社があります。

僕がAI導入の相談を受けた案件で印象に残っているのは、「これとこれをやってほしいから、この金額で」ではなく「もう予算が組まれている中で、どうカスタマイズするか」から入る相談でした。枠が先にあり、中身は後から決める。この順番だと「予算を使い切る内容」が目的になります。

研修も同じです。10時間以上を満たすために内容を薄く伸ばし、限度額いっぱいまで使うためにコースを足す。すると要件は満たすのに現場では使われない研修ができます。

先に決めるのは「どの業務の、何を変えるか」。助成金は、その答えが出たあとに当てはめる制度です。順序が正しければ、10時間という要件はむしろ味方になります。業務を1つ動かすところまで持っていくには、どのみち2時間では足りないからです。

ポイント

①どの業務を変えるかを決める→②その業務が動く研修の中身と時間を決める→③要件に合うかを労働局・社労士に確認する→④計画届を出す。②と③を入れ替えないことが、使われる研修と助成金を両立させる方法です。

よくある質問

事業展開等リスキリング支援コースはいつまで使えますか。

パンフレットには令和8年度末までの時限措置と明記されています。それ以降の扱いは記載がないため、厚生労働省の最新情報と管轄の労働局で確認してください。

まとめ。AI研修の予算を通すための順序

生成AI研修に使える助成金は人材開発支援助成金で、候補は事業展開等リスキリング支援コースと人への投資促進コース(定額制訓練)です。予算を通す順序は次のとおりです。

  1. 社内の前提を確認する。推進者の選任と計画の策定・周知

  2. 変えたい業務を先に決める。助成金の枠から中身を決めない

  3. 要件の3点で設計する。実訓練時間10時間以上・OFF-JT・職務に直接関連

  4. 金額を試算する。助成率だけでなく限度額と賃金要件等まで含める

  5. 訓練開始の1か月前までに計画届を出す(実務上は2〜3か月前から動く)

  6. 終了後2か月以内に支給申請する

可否と金額の最終確認は必ず管轄の労働局・ハローワーク、または社会保険労務士へ。この記事は相談前の下準備として使ってください。

ポイント

助成金の要件を満たしても、研修が現場で使われなければ意味がありません。「AI研修の選び方 比較チェックシート」に、受講後に使われるかを見極める5つの比較ポイント、記入式の候補比較表、説明会で使える質問リストをまとめました。

出典

助成率・限度額・要件は以下の厚生労働省の公式資料を2026年7月時点で確認しました(内容は令和8年5月14日現在)。制度の解釈と研修設計の記述は僕自身の実務からの見解であり、支給を保証するものではありません。

  • 厚生労働省「人材開発支援助成金」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html

  • 厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内(詳細版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001705831.pdf

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戸野塚 蓮

戸野塚 蓮

株式会社AIVEST 代表

株式会社AIVEST。AI活用オンライン講座・AI顧問・受託開発を通じて、 個人と企業のAI活用を支援しています。

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