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社内ChatGPTの作り方。最小構成で始める5ステップ

社内ChatGPTの作り方。最小構成で始める5ステップ

社内ChatGPTとは、社員がそれぞれ個人のアカウントでAIを触っている状態ではなく、会社が用意した1つの入口と、全員が同じ前提で使うための指示書と、管理する担当者がそろった状態のことです。最小構成はこの3点セットで、独自開発もナレッジ検索も必要ありません。

この記事では、社内AIアシスタントを最小構成で立ち上げる5ステップと、どこまで作れば「立ち上がった」と言えるのかの線引きを解説します。あわせて、僕が経営しているAIVESTで社内のAI利用をどう構成したか、最初に固定したもの・後回しにしたもの・作り込んで失敗したものを公開します。

社内ChatGPTとは。最小構成は「入口・指示書・管理者」の3点セット

3点そろって初めて「社内の」ChatGPTになる

社内ChatGPTという言葉は、独自に開発したチャットボットのことだと思われがちです。実際に必要なのは、開発ではなく次の3つです。

  • 入口: 社内の誰もが「AIを使うときはここ」と迷わず開ける場所が1つある

  • 指示書: 会社の前提(何の会社か・誰に向けた文章か・出してよい情報の範囲)を書いた共通の文章があり、全員がそれを使っている

  • 管理者: アカウントを配り、質問を受け、まずいことが起きたら止める人が1人決まっている

この3つがそろっていない状態は、ツールが何であっても社内ChatGPTとは呼べません。逆に、この3つがそろっていれば、既製のAIサービスのままでも社内AIアシスタントとして機能します。

社内ChatGPTの最小構成。入口・共通の指示書・管理者の3点セットと、それぞれが解決する問題

「作る」の中身は開発ではなく、決めることの積み重ね

最小構成における「作る」は、ほとんどが決めごとです。どのツールを入口にするか、指示書に何を書くか、誰が管理者になるか。エンジニアが必要な作業は1つもありません。立ち上げが止まる会社は、技術で止まっているのではなく、この決めごとを誰も決めていないから止まっています。

なぜ「アカウントを配って終わり」で止まるのか?

配られた側は「何に使えばいいか」が分からない

法人プランを契約し、全員にアカウントを配る。ここまでで満足して終わる会社は非常に多いです。しかし配られた側から見ると、目の前にあるのは白い入力欄だけです。

自分の業務のどこに使えるのかは、使い慣れた人にしか分かりません。AIは、使い道を思いつける人にしか価値を返さない道具です。だから配布だけでは、もともと自分で使っていた数人だけが使い続け、残りは1週間で開かなくなります。

「これ聞いていいのかな」で手が止まる

もう1つの理由は、判断の負荷です。顧客名を入れていいのか。見積書を貼っていいのか。この判断を全社員に個別にさせている限り、慎重な人ほど使いません。

ルールがないことは自由ではなく、判断を個人に押しつけている状態です。使ってよい範囲が1枚の紙で示された瞬間に、迷いは消えます。

誰に聞けばいいか分からない

3つ目は、詰まったときの逃げ場がないことです。うまく答えが返ってこなかったとき、社内に聞ける相手がいなければ、その人はそこで終わります。社内AIの利用率は、ツールの性能より「聞ける相手がいるか」で決まります。最小構成に管理者を必ず入れるのはこのためです。

社内AIアシスタントの作り方。最小構成の5ステップ

ここからが具体的な手順です。この5つで、社内ChatGPTは立ち上がります。所要は決めごとの時間だけで、開発期間は発生しません。

入口を1つに決める

使うAIサービスを1つに絞り、「社内でAIを使うときはここを開く」を宣言します。複数を試したい気持ちは分かりますが、入口が2つある時点で社員は迷い、迷った人は使いません。個人アカウントの利用は原則やめて、会社が管理できる契約に寄せます。

共通の指示書を1枚書く

会社の前提を、AIに毎回読ませる文章として1枚にまとめます。事業内容、主な顧客、文章のトーン、社名や商品名の正しい表記、出してはいけない情報。多くのAIサービスにはこれを固定で読ませる機能(カスタム指示や共有アシスタントの設定)があります。無ければ、社内の共有ドキュメントに置いて毎回コピーさせる形でも構いません。

最初の3つの用途を指定する

「自由に使ってください」ではなく、業務名で3つ指定します。例えば、メール文案の作成、議事録の要約、資料のたたき台作り。全員が同じ3つから始めることで、うまくいった聞き方を共有できるようになります。

管理者を1人決め、聞ける場所を1つ作る

アカウント管理と質問対応を担う人を1人決めます。専任である必要はありません。あわせて、チャットツールに質問チャンネルを1つ作り、「うまくいった指示文」と「うまくいかなかった例」を投げる場所にします。

2週間後に、使われた形跡だけを見る

2週間後に見るのは満足度アンケートではなく、質問チャンネルに何件の投稿があったか、指定した3用途が実際に使われたかです。使われていなければ、用途の指定が業務に合っていないだけです。指定を差し替えて、もう2週間回します。

社内ChatGPT最小構成の5ステップ。入口の決定から2週間後の点検までの流れ

ステップ2の指示書に、最初から入れるべきこと

指示書は長さではなく、「毎回同じ説明を繰り返している内容」を集めたものです。判断基準は簡単で、社員がAIに同じ前置きを2回以上書いていたら、それは指示書に入れるべき項目です。

指示書は完成させるものではなく、使いながら足していくものです。 初版はA4で1枚に収まる分量で十分です。

AIVESTの社内AI運用はどう立ち上がったか

ここからは僕自身の話です。AIVESTでは、日々の業務の多くをAIに寄せて回しています。その全体像は生成AIの社内活用事例にまとめました。この記事では、その手前の「立ち上げの部分」で何を先にやり、何を後回しにし、何で失敗したかを書きます。

最初に固定したのは、入口の一本化と共有の指示書だった

僕が最初に固定したのは、ツールの数を増やすことではなく、AIを使う入口を1つに寄せることと、その入口が毎回読む共通の指示書を作ることでした。

指示書には、日付や時刻の扱い方、ファイルをどこに置くか、機密の扱い、文章のトーンといった、僕が毎回説明していた内容を書きました。最初は文字通り1枚です。それが今では、事業や案件の単位で追加の1枚が積み重なり、全体で100枚を超える階層になっています。

大事なのは枚数ではなく構造です。全体に効く共通ルールを1枚、その下に領域ごとの追加を1枚。この形にしてから、AIに毎回同じ前置きを書く作業がなくなりました。

入口は1つ、指示書は1枚、管理者は1人。3つとも増やしたくなったら、それはまだ最小構成を作り終えていないということです。

後回しにしたのは、ナレッジ検索と自動化だった

社内AIの話になると、真っ先に「社内の資料を全部読ませたい」「定型業務を全部自動化したい」という要望が出ます。僕も最終的にはどちらもやっていて、会議録画や講座教材を検索できる仕組みも、決まった時刻に勝手に走る仕組みも動かしています。ただ、それらが効き始めたのは入口と指示書が定着したあとでした。順番が逆だと、検索できる資料を用意しても、誰も開かない入口の奥に置くことになります。

作って失敗したのは、いきなり作り込んだ仕組みだった

失敗のほうがはっきりしています。僕は自分の業務用に、専用のコマンド・専用のダッシュボード・専用の集計を備えた多機能な仕組みを一度作り込みました。当時は良い設計に見えていました。

結果として、2026年6月にその第1世代を丸ごと引退させています。今は置き場に収容してあり、現行の仕組みからは一切参照していません。使い続けたのは、実は入口と指示書という一番地味な部分だけでした。

作り込んだ機能は捨てましたが、指示書は1枚も捨てていません。 これが、最小構成を「入口・指示書・管理者」の3つに絞る理由です。

最小構成に入れないもの。ナレッジ検索・自動化・独自開発を後回しにする理由

後回しにする3つと、その理由

最小構成に入れないものを、あえて名指しします。

  • 社内ナレッジの検索(RAG): 過去資料を根拠に答えさせる仕組み。価値は高いが、AIを開く習慣がない会社に入れても検索されない

  • 業務の自動化: 決まった時刻に走らせる仕組み。何を任せるかが定まっていない段階では、間違った作業を高速化するだけになる

  • 独自開発: 自社専用の画面を作ること。作った時点で保守の担当者が必要になり、更新が止まった瞬間に既製サービスに機能で追い抜かれる

後回しは「やらない」ではなく「順番」

誤解のないように書くと、これらは不要という意味ではありません。僕自身が全部やっています。ナレッジ検索の作り方は社内ナレッジをAIで検索可能にする記事に、自動化を任せる範囲の決め方はAI自動化のリスク設計の記事に書きました。

判断基準はシンプルです。指定した3用途が2週間続いて使われているか。 続いていないうちに次の層を足すと、使われない仕組みが増えるだけです。

関連記事中小企業の生成AI導入の進め方。最初の90日チェックリスト中小企業の生成AI導入は、最初の90日を「試す→型にする→任せる」の3段階に区切って進めるのが基本です。自社で実践し顧問として導入支援もしている立場から、時系列の手順と90日チェックリスト全項目を公開します。

誰が管理するのか。担当者1人と、聞ける場所1つ

管理者に必要なのは技術力ではない

管理者と聞くと情報システム部門を想像しますが、最小構成の管理者に技術的な知識はほとんど要りません。実際に担うのは次の3つです。

  • アカウントの発行と停止(退職者のアカウントを止める)

  • 質問を受けて、うまくいった聞き方を共有する

  • まずい使い方が見つかったときに、いったん止めて判断を仰ぐ

向いているのは、その業務をいちばん多く回している人です。AIに一番詳しい人ではありません。用途を業務の言葉で説明できる人のほうが、社内の質問に答えられます。

「聞ける場所」を個人宛にしない

もう1つの要点は、質問を管理者への個人チャットにしないことです。個人宛にすると、同じ質問が何度も来て管理者が疲弊し、しかも回答が誰にも共有されません。

チャットツールにチャンネルを1つ作り、そこに投げる形にします。質問と回答が全員から見える場所にあるだけで、社内AIの立ち上がり方は変わります。他人の使い方を見て、自分の業務への当てはめを思いつく人が出てくるからです。

使ってよい範囲のルールは1枚で足りる

最小構成の段階で、分厚い規程は不要です。必要なのは、社員が迷ったときに見る1枚です。書くのは「入れてよい情報と入れてはいけない情報」「AIの出力をそのまま社外に出さないこと」「困ったら誰に聞くか」の3点で足ります。

条文の作り方や、そのまま使える雛形は社内のChatGPT利用ルールの記事にまとめてあるので、ここでは繰り返しません。最小構成で押さえるべきは、完璧なルールを作ることではなく、1枚のルールを先に配ることです。ルールがないまま配ると、慎重な社員から使わなくなります。

最小構成から広げる順番。2つ目・3つ目に何を足すか

2つ目は「用途を増やす」ではなく「型を固める」

3用途が使われるようになったら、次にやるのは用途を10個に増やすことではありません。うまくいった聞き方を、誰でも同じ結果が出る形に固めることです。

質問チャンネルに溜まった「うまくいった指示文」から、頻度の高いものを社内の共有アシスタントとして登録します。多くのAIサービスには、用途ごとに設定を保存して共有する機能があります。個人の工夫を、会社の資産に変換する工程がここです。

3つ目に、ようやくナレッジ検索

型が固まると、必ず「その資料をAIが自分で探してくれたらいいのに」という声が出ます。この声が現場から出てきたときが、ナレッジ検索を足すタイミングです。

逆に言えば、この声が出ていない段階で検索の仕組みを入れても使われません。順番を守ると、次に何を足すかは自分で考えなくても、社内から要望として上がってきます。その先が自動化の領域で、人が開いて指示を出す形から、決まったタイミングで走って結果だけが上がってくる形に寄せていきます。

社内ChatGPTを広げる順番。最小構成から型の共有、ナレッジ検索、自動化へ進む段階

社内ChatGPTの作り方でよくある質問

立ち上がったかどうかは何で判断すればいいですか?

指定した3用途が、2週間続けて複数の人に使われているかで判断します。導入したツールの数でも、アカウントの発行数でもありません。使われた形跡が2週間続いていれば、次の層を足してよい段階です。

まとめ。作るのは仕組みではなく「使われる状態」

社内ChatGPTの作り方は、開発の話ではなく、決めごとと配り方の話です。

  • 最小構成は「入口1つ・指示書1枚・管理者1人」の3点セット

  • アカウント配布で止まる原因は、用途の未指定・判断の丸投げ・聞ける相手の不在

  • 5ステップの最後は「2週間後に使われた形跡を見る」。満足度ではなく形跡で判断する

  • ナレッジ検索・自動化・独自開発は後回し。現場から要望が上がった順に足す

僕自身、作り込んだ仕組みは丸ごと引退させましたが、入口の一本化と共有の指示書はそのまま残って今も動いています。残るのは、機能ではなく使われた習慣のほうです。 まずは入口を1つ宣言して、指示書を1枚書くところから始めてみてください。

ポイント

最小構成の3点セットのうち、いちばん先に配るべき「使ってよい範囲のルール」は、社内AI利用ルール ガイドライン雛形(全9条)として無料配布しています。空欄を自社の内容に置き換えるだけで使える記入式で、導入5ステップと形骸化させないための運用の要点もついています。

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戸野塚 蓮

戸野塚 蓮

株式会社AIVEST 代表

株式会社AIVEST。AI活用オンライン講座・AI顧問・受託開発を通じて、 個人と企業のAI活用を支援しています。

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