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AI研修は内製できるか。外部研修との使い分け基準

AI研修の内製とは、外部の研修会社や講師に頼らず、教材の設計から講師役、実施後の定着までを自社の社員で回すことです。内製できるかどうかは「教えられる人がいるか」ではなく「教えたあとに続ける仕組みを作れるか」で決まります。この記事は、社員へのAI教育を社内でやるか外部研修に頼むか迷っている経営者・人事に向けて書いています。
僕はAIVESTという会社を経営しながら、非エンジニアの経営者・実務担当に向けてClaude Code(Anthropicが提供するAIエージェント。指示を渡すと自分で調べ、作業し、成果物まで作るAI)の講座やセミナーを主催しています。他社主催の研修に外部講師として呼ばれることもある。つまり「外部研修を売る側」です。その立場から書きますが、結論はポジショントークの逆になります。内製できる領域は確かにあり、しかも研修の成果を最終的に決めるのは内製側の仕事です。順に説明します。
AI研修の内製とは。外部研修との違いはどこにあるか
研修は「設計・実施・定着」の3つの仕事でできている
研修とひとことで呼ばれているものを分解すると、中身は3つの仕事です。
設計。誰に、何を、どの題材で教えるかを決め、教材と演習を用意する
実施。当日、人前で教える
定着。研修のあと、受講者が業務で使い続ける状態を作る
内製とは、この3つすべてを自社の社員でやることです。多くの会社は「実施」だけをイメージして内製できるかを考えます。詳しい社員がいるから話せるだろう、という発想です。ところが実際に重いのは設計と定着のほうで、内製が止まるのもほぼこの2つが原因です。
外部研修が売っているのは知識ではなく「立ち上げの時間」
生成AIの使い方の情報自体は、公式ドキュメントにも動画にも無料で転がっています。外部研修が売っているのは知識そのものではなく、設計にかける時間と、複数の会社を見てきた比較軸です。
だから内製か外部かは「社内に知識があるか」の問題ではありません。立ち上げにかかる時間をお金で買うか、社内の工数で払うかという、時間の買い方の選択です。ここを取り違えると、「詳しい社員がいるのに研修が形にならない」という状態になります。知識はあっても、設計の時間が確保されていないからです。

外部に頼む場合の依頼先タイプや費用の構造は、依頼を受ける側の視点で別記事にまとめています。
関連記事生成AI研修の講師依頼。外部講師の費用の決まり方と選び方生成AI研修の講師依頼を、依頼される側である講師の視点から解説します。研修会社・AI講師の派遣サービス・個人直接の3タイプ、講師料が総額の5〜7割になる費用の構造、助成金の要件、良い提案が返ってくる依頼の仕方まで。AI研修は内製できるのか。依頼を受ける講師側から見た結論
結論を先に書きます。半分は内製できます。そして残りの半分は、内製でしかできません。
立ち上げは外部が速い領域
「半分はできる」の半分とは、定着のことです。逆に、設計と最初の実施、つまり立ち上げは外部が速い。理由は2つあります。
1つは変化の速さです。生成AIは半年で前提が変わります。教材を社内でゼロから作っている間に、その教材の題材が古くなる。追いかける工数を専任で持てる会社は多くありません。
もう1つは我流の問題です。社内の第一人者は、多くの場合その人の使い方しか知りません。その人の型を全社の型にしていいかは、他社の型と比べないと判断できない。比較軸は外からしか持ち込めません。
定着は内製にしかできない領域
一方で、外部講師にできるのは最初の型を渡すところまでです。研修が終わって受講者が現場に戻れば、目の前の仕事が優先されます。翌週に「やってみた人はいますか」と聞く役、質問に答える役、業務で使い続けさせる役は、社内にしか置けません。
研修の成果は当日の出来ではなく、翌週から誰が回すかで決まります。だから「内製できるか」という問いへの僕の答えはこうなります。立ち上げまで全部を内製する必要はない。ただし定着だけは、内製する以外の選択肢がそもそも存在しない。
内製で回る会社と回らない会社を分けた3つの差
依頼を受ける側にいると、「社内でやろうとしたが続かなかった」という相談を一定の割合で受けます。逆に、外部を使うのは最初だけで、あとは自社で回してしまう会社もある。個別の社名や数字は出せませんが、複数の会社を見てきて共通していた差は3つに絞れます。予算や会社の規模ではありませんでした。
差1. 教える人の工数が「業務」として確保されているか
回らない会社は、詳しい社員の善意と片手間で回そうとします。本業が忙しくなった瞬間に勉強会が止まり、そのまま再開されない。回る会社は、週に数時間でも担当者の工数を業務として割り当て、その活動を評価の対象にしています。
内製の最初の意思決定は教材選びではなく、担当者の工数を業務にすることです。 ここに手を付けずに始めた内製は、担当者の忙しさと一緒に消えます。
差2. 題材が「自社の業務」になっているか
回らない会社の勉強会は、ツールの新機能紹介をなぞる会になっています。参加者は「すごいですね」と言って帰り、翌日の仕事は何も変わらない。回る会社は、受講者に自分の業務を1つ持ち込ませて、その場で動かします。議事録・見積もり・問い合わせ対応など、題材が自分の仕事なら、持ち帰るのは感心ではなく手順です。
差3. 研修のあとに「続けさせる仕組み」があるか
3つ目が最大の差です。内製できるかを分けるのは、教えられる人の有無ではなく、続ける仕組みの有無です。
これは僕自身が講座を設計したときの判断でもあります。主催しているClaude Code講座は、当初3か月ほどの期間を想定していましたが、週1回の勉強会を6か月続ける形に延ばしました。理由は、受講者の「今週何をやればいいか分からない」をなくすためです。1回の研修でどれだけ盛り上がっても、翌週に開く理由がなければ使われなくなる。反復の器を先に作ることが、内容の立派さより定着に効きました。
内製できるかを自己診断したい場合は、僕が外部講師として依頼を受けたときに使っている確認項目がそのまま使えます。
依頼を受けたら、台本を書き始める前に「ゴール・尺・登壇体制・受講者の前提知識」の4つを確認する。この4つが埋まらないと、骨子は書けても台本は書けない。(登壇依頼を受けたときの自分用チェック項目より)
この4つを自社で埋められるなら、研修の設計は内製できます。埋められないなら、埋めるところから外部と一緒にやるのが現実的です。

内製に向く教育・外部研修に向く教育の使い分け基準
内製か外部かは、会社単位で決めるものではありません。教育の中身ごとに分けるものです。
| 教育の中身 | 向くのは | 理由 | |---|---|---| | 自社ツール・自社データを使う操作手順 | 内製 | 外部講師は自社の業務手順を知らない | | 社内のAI利用ルールの周知 | 内製 | 自社の判断基準そのものだから | | 日常業務での活用の反復・定着 | 内製 | 定着は頻度で決まる。外部を毎週呼ぶと費用が合わない | | 最初の型づくり・全員の前提合わせ | 外部研修 | 我流の平準化と比較軸は外からのほうが速い | | 経営層を含む方針レベルの合意づくり | 外部研修 | 社外の人が言うことで初めて通る話がある | | 変化の速い領域のアップデート | 外部研修 | 追いかける工数を社内で常設すると高くつく |
物差しは「頻度」と「鮮度」の2軸
表を貫いている物差しは2つです。頻度が高い教育は内製、鮮度が命の教育は外部。毎週やるものを外部に頼むと費用が合わず、半年で変わるものを内製で追うと工数が合いません。
判断に迷ったら「その教育は毎週必要か」と問えば、だいたい割り切れます。毎週必要なら内製の仕組みに入れる。年に数回でいいなら外部で買う。社内ルールの整備そのものについてはChatGPTの社内利用ルールの作り方に書きました。
教える中身の設計は共通
なお、内製でも外部でも「誰の、どの業務を、どうしたいか」から逆算してカリキュラムを組む考え方は共通です。設計の中身はAI研修のカリキュラムの作り方にまとめています。内製する場合はこれを自社で書くことになり、外部に頼む場合はこれを書ける相手を選ぶことになります。
外部で立ち上げて内製に移行する現実的な順序
僕が勧めるのは、内製か外部かの二択ではなく順番です。立ち上げを外部で短縮し、定着を内製で持つ。具体的には次の順序で進めます。
研修を発注する前に決めます。この人は「受講者の1人」ではなく、外部講師から型を受け取って社内で回す担当者です。工数の割り当てもこの時点で決めます
全員の前提を揃え、受講者自身の業務が1つ動くところまでを外部でやり切ります。「すごい」で終わる実演会にしないことが条件です
研修資料の二次利用と録画の社内共有ができるかを、発注時に契約で確認しておきます。ここを確認し忘れると、内製に渡せるものが何も残りません
新しい教材は作りません。研修で使った題材を、各自の業務に置き換えて動かすだけの会にします。器を軽くするほど続きます
チャットツールの専用チャンネル1つで十分です。「うまくいった手順」が社内に蓄積され始めたら、内製が回り始めた合図です
半年ほど回ったら、外部の使い方を毎回の講師から半期に1回の情報更新役に変えます。支払いは立ち上げ時よりずっと小さくなります
この順序の狙いは、外部への支払いを「毎年繰り返す研修費」から「立ち上げの一時費用」に変えることです。逆に、社内の受け皿を作らないまま外部研修だけを毎年繰り返すのが、いちばんお金が残らないパターンです。立ち上げ時の実質負担を下げたい場合は生成AI研修に使える助成金も確認してください。

AI研修の内製化でよくある失敗
内製に踏み出した会社がつまずくパターンも、講師側から見ているとよく似ています。
1. エース社員に「ついでに」任せる。 いちばん詳しい人はいちばん忙しい人でもあります。工数を業務として切り出さない限り、本業の繁忙と同時に教育は止まります。
2. 教材づくりから始める。 完璧な資料を作ってから始めようとすると、完成する頃には中身が古くなっています。教材は反復の中で育てるもので、最初に必要なのは集まる曜日の固定です。
3. 全社一斉に展開する。 部署ごとに業務も習熟度も違うのに、同じ内容を一斉にやると誰の業務にも刺さりません。まず1部署で回して成功例を作り、横に広げるほうが結果的に速いです。

内製の相談を受けたとき、僕が先に見るのは教材の出来ではなく「勉強会の曜日が決まっているか」です。反復の器さえあれば教材はあとから育ちます。僕の講座を週1回×6か月の設計にしているのも同じ理由なんですよね。
AI研修の内製に関するよくある質問
条件付きでできます。条件は、その社員の工数を業務として確保できること、その人の使い方以外の型も取り入れる機会があること、研修後に続けさせる役を担えることの3つです。3つとも満たすのは実際には難しく、立ち上げだけ外部を使ってその社員を引き継ぎ先にする形が現実的です。
見かけ上は内製です。ただし内製の費用は請求書が来ないだけで、担当者の工数として払っています。設計に慣れていない担当者が教材づくりに使う時間まで含めると、立ち上げ局面は外部のほうが安くつくことが多いです。反対に、定着の反復は頻度が高いので内製でないと費用が合いません。
立ち上げの外部研修に1〜2か月、社内の反復で定着させるのに半年が目安です。僕が主催する講座も、当初想定の3か月では反復が足りないと判断して週1回×6か月の設計にしました。合計でおおよそ半年から1年を見てください。
教材の購入で置き換えられるのは「設計」と「実施」の一部だけです。自社業務への当てはめと、使い続けさせる仕組みは教材には入っていません。教材を買う場合も、週1回の勉強会など反復の器と担当者はセットで用意する必要があります。
まとめ。内製か外部かは二択ではない
研修の中身は設計・実施・定着の3つ。内製が止まる原因はほぼ設計と定着にある
講師側から見た結論は「立ち上げは外部が速く、定着は内製にしかできない」。内製できるかは教えられる人の有無ではなく、続ける仕組みの有無で決まる
内製で回る会社と回らない会社の差は、担当者の工数・題材・続ける仕組みの3つ。予算や規模ではない
使い分けの物差しは頻度と鮮度。毎週必要な教育は内製、鮮度が命の教育は外部
現実的な順序は、外部で型と成功例を作り、週1回の社内反復に引き継ぐこと
内製か外部かで迷っている段階なら、先に決めるべきは発注先ではなく、社内の引き継ぎ先の1人です。その1人さえ決まれば、外部研修は「毎年の出費」ではなく「立ち上げの一時費用」に変わります。
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