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AI研修の助成金申請の手順と条件。計画届から支給まで

AI研修の助成金申請の手順と条件。計画届から支給まで

AI研修の助成金申請は、厚生労働省の人材開発支援助成金の「訓練実施計画届を訓練開始日の6か月前から1か月前までに労働局へ提出し、訓練実施後、終了日の翌日から2か月以内に支給申請する」という流れで進めます。この記事では、自社と研修が条件を満たすかの確認方法と、計画届から支給までの手順・期限を、2026年8月時点の公式情報で解説します。

僕はAIVESTという会社を経営しながら、非エンジニアの経営者・実務担当に向けてClaude Code(Anthropicが提供するAIエージェント。指示を渡すと自分で調べ、作業し、成果物まで作るAI)の講座を主催しています。助成金を使う前提で研修設計の相談を受けることが多く、この記事では公式の手順に加えて、計画届で実際に詰まりやすいポイントと、対象にならないAI研修の共通点まで書きます。

なお「そもそもどんな制度か・いくら助成されるか」という制度の全体像と助成率・限度額は、別記事にまとめています。この記事は「使うと決めた後の申請実務」に絞ります。

関連記事生成AI研修に使える助成金。人材開発支援助成金の活用法生成AI研修に使える助成金は厚生労働省の人材開発支援助成金です。対象コース・助成率と限度額・申請の流れ・要件に合う研修と合わない研修の差を、2026年7月時点の公式情報と、研修を提供する講師側の実務から解説します。

AI研修に使える助成金と申請の全体像

AI研修の助成金申請で使う制度は、人材開発支援助成金です。2026年8月時点で公式ページに掲載されているコースは7つあり、AI研修で主な候補になるのは次の2つです。

  • 事業展開等リスキリング支援コース: 社内のデジタル化・DX化に関連する業務に必要な訓練が対象。集合研修型のAI研修はここが本命

  • 人への投資促進コース: デジタル人材育成や定額制訓練(サブスクリプション型の研修サービス)が対象。eラーニングサービスを面で入れる場合の候補

このほか、職務に関連した知識・技能の訓練全般を扱う基本コースとして人材育成支援コースがあります。どのコースで出すかは研修の形式で決まるので、研修を選ぶことと申請コースを決めることは、実務上ほぼ同じ作業です。

申請の全体像は3段階です。

  1. 訓練開始前: 社内の前提を整え、訓練実施計画届を労働局に提出する

  2. 訓練期間中: 計画どおり実施し、記録を残す

  3. 訓練終了後: 経費を全額支払い、期限内に支給申請する

このうち最初の関門が、訓練開始の1か月前という計画届の締切です。ここから逆算してスケジュールを組むのが、申請実務の骨格になります。

どんなAI研修なら助成金の対象になるのか。条件を確認する

条件は「会社側」と「研修側」の2層に分かれます。どちらか一方でも欠けると対象になりません。

会社側の条件。書類が2つ存在するかをまず確認する

事業展開等リスキリング支援コースのパンフレット(令和8年8月3日版)に記載されている、事業主側の主な要件は次のとおりです。

  1. 雇用保険適用事業所の事業主であること

  2. 対象労働者がその事業所の雇用保険被保険者であること

  3. 研修や人事の担当課長などを職業能力開発推進者として選任していること(未選任の場合は計画届を提出する日までに選任)

  4. 事業内職業能力開発計画を策定し、労働者に周知していること(未策定の場合は計画届の提出日までに策定・周知)

1と2はほとんどの会社が満たしますが、3と4は書類自体が社内に存在しないケースが多い項目です。自社が対象かを確認する実務は、「職業能力開発推進者の選任記録」と「事業内職業能力開発計画」の2つが社内にあるかを探すことから始まります。 どちらも計画届の提出日までに整えれば間に合いますが、ゼロから作るなら数日は見ておくべき作業です。各都道府県の労働局が事業内職業能力開発計画の作成相談を受け付けています。

研修側の条件。時間・形式・職務との関連の3点

研修側の主な要件は3点です。

  • 訓練時間数が10時間以上であること

  • OFF-JT(通常業務から離れて行う研修)であること。またはOFF-JTとOJTの組み合わせ

  • 対象労働者の職務に関連する知識・技能を習得させる訓練であること

検討中のAI研修がこの3点を満たすかは、研修会社に「実訓練時間の合計」「実施形式」「カリキュラムの各項目が受講者のどの業務に対応するか」を聞けば確認できます。2時間の単発セミナーや、業務と結びつかない教養型の講義は、この時点で候補から外れます

さらに2026年8月3日の改正で、事業展開等リスキリング支援コースは「対象とならない訓練」の線引きが明確になりました。詳しくは後述しますが、汎用的な内容のAI研修は明示的に対象外とされたため、研修選びの段階でこの改正を織り込む必要があります。

会社側の条件と研修側の条件を2層で整理した図

申請手順。計画届の提出から支給申請まで

手順を時系列で並べます。期限はすべて、事業展開等リスキリング支援コースのパンフレット(令和8年8月3日版)を2026年8月時点で確認したものです。

社内の前提を整える

職業能力開発推進者の選任と、事業内職業能力開発計画の策定・周知。未整備なら計画届の提出日までに済ませます。労働局が作成相談を受け付けています。

研修・対象者・コースを確定する

実訓練時間10時間以上・OFF-JT・職務に関連の3点で研修を選び、カリキュラム、時間割、受講者名簿、経費見積もりを固めます。研修の形式で申請コースが決まります。

訓練実施計画届を提出する

訓練開始日から起算して6か月前から1か月前までの間に、管轄の労働局へ提出します。定額制サービスによる訓練は契約期間の初日の1か月前まで。電子申請(雇用関係助成金ポータル)も使えます。

訓練を実施し、記録を残す

計画どおりに実施し、出席・受講時間の実施記録を残します。日程や受講者に変更が生じたら、定められた期限までに変更届を提出します。期限内に変更届を出さずに実施した部分は助成対象になりません。

訓練経費を全額支払う

支給申請日までに事業主が経費を全額負担していることが要件です。助成金は後払いで、立て替え期間の資金繰りは自社で持ちます。

支給申請を行う

訓練終了日の翌日から起算して2か月以内に申請します。この期限を過ぎると支給されません。2026年5月14日の改正以降、「受講料等の価格設定に関する疎明書」(様式第28号)の提出も必要です。

実務上の締切は、訓練開始の2〜3か月前

書類上の締切は「訓練開始の1か月前」ですが、計画届にはカリキュラム・時間割・受講者・見積もりを書く欄があるため、これらが揃っていないと提出できません。研修会社との日程調整や社内の受講者選定を含めると、実務上は訓練開始の2〜3か月前には動き始めている必要があります。

「10月から研修を始めたい」なら、7月には研修会社の選定と社内の前提整備を並行で走らせる。このスケジュール感を最初に共有しておくと、稟議も申請も止まりません。

計画届から支給申請までの逆算スケジュールを示した図

訓練実施計画届で詰まりやすいポイント

僕は講師側なので申請書類そのものは作りませんが、助成金前提の相談を受けていると、計画届の段階で止まる会社には共通のパターンがあります。類型として4つ挙げます。

研修会社から出る資料の範囲を確認していない

計画届にはカリキュラムと時間割を訓練の実体が分かる粒度で書く必要があり、その根拠資料は研修会社から取り寄せることになります。ここでよくあるすれ違いが、研修会社が申請書類を作ってくれるという思い込みです。

僕の講座の説明会でも毎回聞かれますが、僕たちが出せるのは、カリキュラム・時間数・料金が分かる書類やパンフレットといった「研修の実体を示す資料」までです。労働局に出す申請書類そのものは、申請主体である事業主(受講させる会社)が作ります。契約前に「計画届に添付する資料として何が出せるか」を研修会社に確認しておくと、提出直前に資料が足りない事態を防げます。

受講者の選定理由が訓練内容とつながっていない

2026年8月3日の改正で、事業展開等リスキリング支援コースは訓練内容に沿って対象労働者を選定しているかが明確な審査ポイントになりました。改正資料の例では、CO2排出量の算定を学ぶ訓練を算定業務の担当者に受けさせる場合は対象、人事や営業の従事者に受けさせる場合は対象外とされています。

AI研修でいえば、「営業向けの提案書作成研修を、営業部門でない人にも受けさせる」形が危ない。全社一律で同じ研修を受けさせる設計は、計画届の段階で説明がつかなくなります。 部門ごとに題材を変えるか、対象者を業務で絞るかの判断が先です。

職務との関連が「AIの基礎を学ぶ」としか書けない

計画届で訓練の必要性を説明するとき、「AIリテラシーの向上のため」「DXの基礎理解のため」といった抽象的な言葉しか出てこない場合、研修選びの段階で職務との接続が設計されていません。誰のどの業務を変える研修なのかが決まっていれば、この欄は具体的に書けます。書けないのは書類の問題ではなく、研修設計の問題です。

日程・受講者の変更に弱いスケジュールを組んでいる

計画届の提出後に日程や受講者が変わったら、定められた期限までに変更届を出す必要があります。期限内に変更届を出さずに実施した部分は助成対象になりません。繁忙期をまたぐ日程や、直前まで受講者が確定しない組み方は、変更届の手間と対象外リスクを増やします。受講者は計画届の前に確定させ、日程は変更が起きにくい時期に置くのが安全です。

「申請書類も作ってもらえますか」と聞かれたら、僕は「研修の実体を示す資料は全部出します。申請書類は事業主側の作業なので、自社でやるか社労士さんに依頼してください」と線を引いて答えています。ここを曖昧にすると、締切直前にお互い困ります。

対象にならないAI研修の共通点

要件に合う研修と合わない研修の差は、2026年8月3日の改正でかなり明確になりました。厚生労働省の改正資料(事業展開等リスキリング支援コース・令和8年8月3日からの変更点)には、生成AI研修の具体例がそのまま載っています。

助成対象: 生成AIを活用して商品提案書の構成案作成、文章生成、修正方法を学ぶ営業担当者向けの訓練

助成対象外: 生成AIを利用するために汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ訓練

(厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)改正 令和8年8月3日からの変更点について」より)

同じ生成AI研修でも、特定の職務の具体的な業務に直結するかどうかで対象・対象外が分かれる、というのが公式の線引きです。DXの概念やデータ活用の考え方を学ぶだけの訓練も、汎用的内容として対象外の例に挙げられています。

外れる研修の共通点は「誰の業務も変わらない」こと

講師側から見ると、この改正は驚く内容ではありません。助成金前提の相談で要件に合わなかった研修は、以前から共通して次のどれかでした。

  • 時間が足りない: 2時間の単発セミナーの積み上げで、実訓練時間10時間に届かない

  • 形式が合わない: 業務時間外の自主参加型で、業務命令のOFF-JTになっていない

  • 職務とつながらない: 「AIとは何か」の教養で終わり、受講者の具体的な業務に当てはめる設計がない

3つ目が今回の改正で明文化された部分です。「ツールの使い方を教える研修」は対象外に寄り、「特定の業務のやり方を変える研修」だけが対象に残る方向に制度が動いています。そしてこれは、助成金と関係なく「受講後に現場で使われる研修」の条件と同じです。研修選びの段階でこの物差しを使えば、助成金の要件と研修の実効性を同時に満たせます。

なお、eラーニングによる訓練は同コースで同一労働者につき年度1回までという上限も、2026年8月3日以降に提出する計画届から新設されました。録画教材中心の研修を繰り返し使う計画は組めなくなっています。

助成対象になるAI研修と対象外のAI研修の分かれ目を示した図

研修の中身をどう業務に接続するかは、非エンジニア向けAI研修のカリキュラム設計AI研修を外部講師に頼む場合の選び方にまとめています。

申請前に確認しておく公式情報の見方

助成金の記事は古い情報が混ざりやすく、この記事も例外ではありません。2026年8月時点の確認方法を書いておきます。

一次情報は3点セットで確認する

  1. 厚生労働省「人材開発支援助成金」ページ: 「人材開発支援助成金」で検索すると厚生労働省のページ(mhlw.go.jp)が出ます。コース一覧と最新の改正情報はここが起点です

  2. 各コースの詳細版パンフレット: 要件・期限・提出書類はコースごとの詳細版パンフレットに書かれています。2026年8月時点の最新は令和8年8月3日版で、「令和8年8月3日以降に提出された計画届に基づく訓練が対象(経過措置あり)」と明記されています。必ず版の日付を確認してください

  3. 管轄の労働局・ハローワーク: 支給の可否は労働局の審査で決まります。要件の解釈に迷う点は、申請前に管轄の労働局に問い合わせるのが確実です

制度は年度内でも変わります。実際に2026年だけでも、5月14日に疎明書(様式第28号)の提出義務化、8月3日に対象訓練の線引き変更とeラーニング回数制限が入りました。申請時点の最新パンフレットで期限と様式を確認し、細部は労働局か社会保険労務士に確認する。この2段構えが安全です。

ポイント

本記事は厚生労働省の公式ページと事業展開等リスキリング支援コースのパンフレット(令和8年8月3日版)を2026年8月時点で確認して書いています。支給の可否と金額は事案ごとに労働局が判断します。申請の最終確認は必ず管轄の労働局・ハローワークまたは社会保険労務士に行ってください。

よくある質問

計画届の提出後に受講者や日程が変わったらどうなりますか。

定められた期限までに変更届を労働局へ提出します。期限内に変更届を出さずに変更後の訓練を実施した場合、その部分は助成対象になりません。変更が起きにくいように、受講者と日程は計画届の前に固めておくのが実務上の対策です。

まとめ。申請は研修選びと同時に設計する

AI研修の助成金申請の手順と条件を、実務の順番でまとめます。

  1. 会社側の条件を確認する: 推進者の選任と事業内職業能力開発計画。なければ計画届の提出日までに整備

  2. 研修側の条件で候補を絞る: 10時間以上・OFF-JT・職務に直結。汎用プロンプト研修は対象外に

  3. 受講者を業務で絞る: 訓練内容と選定理由がつながる設計にする

  4. 訓練開始の2〜3か月前に動き出し、1か月前までに計画届を出す

  5. 実施記録を残し、終了後2か月以内に支給申請する

一連の手順を見れば分かるとおり、計画届に書く内容のほとんどは研修の中身そのものです。だから申請の準備は、研修選びと切り離せません。「研修を決めてから助成金を調べる」のではなく、条件を物差しにして研修を選ぶ。それが申請にも研修の実効性にも効く、いちばんの近道です。

ポイント

「AI研修の選び方 比較チェックシート」に、受講後に現場で使われるかを見極める5つの比較ポイント、記入式の候補採点表、研修会社の説明会でそのまま使える質問リストをまとめています。助成金の条件確認と並行して、研修そのものの目利きに使ってください。

出典

申請手順・期限・要件は、以下の厚生労働省の公式資料を2026年8月時点で確認しました。研修設計と詰まりやすいポイントの記述は、講師側としての僕の実務からの見解であり、支給を保証するものではありません。

  • 厚生労働省「人材開発支援助成金」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html

  • 厚生労働省「令和8年度版 事業展開等リスキリング支援コースのご案内(令和8年8月3日版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731978.pdf

  • 厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)改正 令和8年8月3日からの変更点について」 https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731966.pdf

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戸野塚 蓮

戸野塚 蓮

株式会社AIVEST 代表

株式会社AIVEST。AI活用オンライン講座・AI顧問・受託開発を通じて、 個人と企業のAI活用を支援しています。

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