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AI導入の補助金の選び方。申請前に社内で決める6つのこと

AI導入の補助金は、2026年度は「デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金)」が中心で、AIを含むITツールの導入費用の1/2〜2/3(通常枠・5万円〜450万円)を補助する制度です。研修に使う助成金とは財源も手順も別物で、この記事では2026年9月時点の公式情報で制度の骨格を確認したうえで、申請に進む前に社内で決めておく6つのことを順番に整理します。
僕はAIVESTという会社を経営しながら、AI顧問と受託で中小企業の導入相談を受け、講座では助成金前提の研修設計の相談も受けています。補助金の申請代行はしていませんし、自社でこの補助金を申請した実績もありません。その代わり、補助金で入れたツールが3ヶ月後に使われているかどうかは、申請の書き方ではなく申請前の社内の決め事でほぼ決まる、という現場を何度も見てきました。この記事はその決め事に絞ります。
AI導入に使える補助金とは。研修の助成金と導入の補助金は財源が別
「AI導入 補助金」で検索すると、導入の補助金と研修の助成金が同じ一覧に並んで出てきます。ここが最初の分かれ道です。
導入の補助金。ツールと役務の費用を国が一部持つ
ツールそのもの(ソフトウェア購入費・クラウド利用料)と、導入に伴う役務(設定・研修・保守・活用支援。役務=人が手を動かすサービス部分)に対する補助が、経済産業省・中小企業庁が所管する「デジタル化・AI導入補助金2026」です。申請の相手は事務局に登録されたIT導入支援事業者で、契約は交付決定の後。この2点が研修側と根本的に違います。自治体独自の補助金(検索候補に「東京都」「自治体」が出るのはこのためです)は要件も時期も自治体ごとに違うので、この記事では国の制度に絞ります。
研修の助成金。人に教える費用を厚労省が一部持つ
社員にAIの使い方を教える研修の費用は、厚生労働省の人材開発支援助成金が受け皿です。こちらは訓練開始の1か月前までに計画届を労働局へ出し、訓練後に支給申請する流れで、先に計画を出してから実施する順番になります。制度の全体像は下の記事に、申請実務はAI研修の助成金申請の手順にまとめています。研修そのものの選び方はAI研修の選び方ガイドを参照してください。
関連記事生成AI研修に使える助成金。人材開発支援助成金の活用法生成AI研修に使える助成金は厚生労働省の人材開発支援助成金です。対象コース・助成率と限度額・申請の流れ・要件に合う研修と合わない研修の差を、2026年7月時点の公式情報と、研修を提供する講師側の実務から解説します。つまり「ツールを入れて、使い方も教えたい」という要望は財源が2本に分かれ、手続きの順番も逆向きです。片方の締切に合わせてもう片方を急ぐと、どちらかが対象から外れます。

デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金)の骨格。2026年9月時点で公式に確認したこと
以下は事務局公式サイトと中小企業庁の概要資料(令和8年4月)を2026年9月14日に確認した内容で、通常枠に絞っています。
項目 | 通常枠の内容(2026年9月時点・事務局公式) |
|---|---|
補助率 | 1/2以内。最低賃金近傍の従業員が全従業員の30%以上である月が3か月以上ある場合は2/3以内 |
補助額 | 1プロセス以上: 5万円以上150万円未満/4プロセス以上: 150万円以上450万円以下 |
対象経費 | ソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分)、オプション、役務(導入・活用コンサルティング、導入設定・マニュアル設定・導入研修、保守サポート) |
ツールの要件 | 1種類以上の業務プロセスを保有するソフトウェア(汎用プロセスのみは不可) |
5次締切 | 2026年9月29日(火)17:00。交付決定は2026年11月9日(月)予定 |
事業実施期間 | 交付決定〜2027年4月30日(金)17:00予定。事業実績報告期限も同日 |
申請の前提 | GビズIDの取得。IT導入支援事業者と共同で申請 |
このほかにインボイス枠(インボイス対応類型・電子取引類型)、セキュリティ対策推進枠、複数者連携デジタル化・AI導入枠(締切2026年10月30日17:00)があります。
対象経費に「活用支援」が入っている意味
僕がこの制度で一番見てほしいのは補助率ではなく、対象経費の役務の列です。中小企業庁の概要資料にはこう書かれています。
対象経費: ソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分)、導入関連費(保守運用やマニュアル作成等のサポート費用と、IT活用の定着を促す導入後の"活用支援")も対象(中小企業庁「『デジタル化・AI導入補助金2026』の概要」令和8年4月)
「導入後に使われるようにする作業」が補助の対象経費として明記されているわけです。ツール代だけを申請して定着を自力で頑張るのか、活用支援を役務として申請に含めるのかは、後述する6つの決め事の5番目に直結します。
締切は「時間」まで固定されている
5次締切の2026年9月29日17:00について、事務局サイトには「締切時間を過ぎた場合は、いかなる理由であっても受付対応は一切いたしかねます」とあります。IT導入支援事業者側の入力工程もあるので、社内で決めることは事業者に声をかける前に済ませておく必要があります。
IT導入補助金とAI導入補助金は何が違う?改称で変わったこと、変わらないこと
検索候補に「it導入補助金 ai導入補助金 違い」が出るとおり、ここで迷う人が多いところです。結論から言うと、別の制度が2つあるのではなく、同じ制度の名称が変わりました。
変わったこと
中小企業庁の概要資料は「令和7年度補正予算事業から『デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)』と名称を変更」と説明し、対象を「デジタル化やDX等に向けたAIを含むITツール(ソフトウェア、サービス等)の導入」と書いています。AIが名称と目的に入ったのが変更点です。
変わらないこと
事務局に登録されたIT導入支援事業者と共同で申請する仕組み
補助対象は事務局に登録済みのITツールに限られる仕組み
交付決定の後に発注・契約・支払いをする順番
事業実績報告と事業実施効果報告の義務
つまり「AI導入補助金になったから、AIツールなら何でも対象」ではありません。対象になるかどうかは、製品名ではなく、その製品がどのIT導入支援事業者からどのプランで登録されているかで決まります。特定のAI製品が使えるかは、事務局サイトの「ITツール検索」で製品名を引き、登録の有無とプランを確認するのが唯一の確かめ方です。
申請前に社内で決める6つのこと
制度の骨格が分かったら、IT導入支援事業者に相談する前に社内で次の6つを決めます。決める順番もこの通りです。
「社員に教えたい」が主目的なら厚労省の人材開発支援助成金、「ツールを入れて業務に載せたい」が主目的ならデジタル化・AI導入補助金です。両方やる場合は2本立てにし、締切と手順を別々に管理します。
交付決定前に発注・契約・支払いをしたものは補助を受けられません(事務局公式・2026年9月時点)。今すぐ使いたいツールを補助金に乗せるなら、契約を交付決定後(5次なら2026年11月9日予定)まで待てるかを先に決めます。待てない分は自費で入れると割り切る判断です。
この制度は事業者と共同で申請する仕組みで、直接申請はできません。「補助後の自己負担額」と「事業者を通さず自費で入れた場合の額」を並べ、差額に見合う支援が付いているかを見ます。
ITツール検索で、使いたい製品がどの事業者からどのプランで登録されているかを確認します。業務に必要なプランが登録外なら、補助が付くプランに業務を合わせるのではなく、必要なプランを自費で入れる選択肢を残します。
活用支援は対象経費です。「導入後に誰が、どの業務で、使われた件数をどう数えるか」を役務の内容として事業者と詰め、見積もりに入れます。ツール代だけの申請にしないための項目です。
事業実績報告は申請者が申請マイページで作成し、事業者の確認を経て申請者が提出します。効果報告も申請者が入力します。未報告は交付取消の事由なので、担当者名と、異動や退職のときの引き継ぎまで申請前に決めます。

2番目が一番多い詰まり方
6つの中で、相談の場で一番多く引っかかるのが2番目の「順番」です。「まず試したいから」と有料プランを契約し、後から補助金の話を持ち込む形は、公式の記述に照らすとその契約分は対象になりません。
事務局サイト「交付決定後に必要な手続き」(2026年9月14日確認): 「交付決定前に発注・契約・支払い等を行った場合は、補助金の交付を受けることができません」。無料トライアルの自動更新や、契約中のプランの変更が「契約」に当たるかは個別のケースごとに事務局かIT導入支援事業者に確認してください。この記事では断定しません。
3番目は「仲介コスト」ではなく「支援の中身」で見る
IT導入支援事業者を通す仕組みを「余計な中間マージン」と受け取る経営者もいます。僕は逆で、通す前提なのだから、事業者に何をさせるかを決めるほうが得だと考えています。設定とマニュアル、導入研修、活用支援。役務の列にあるものは、頼めば対象経費に乗せられる可能性があるものです。事業者を選ぶ基準は「補助金に詳しいか」より「導入後の3ヶ月に何をしてくれるか」を先に置きます。
「入れたけど使っているのは数人だけ」を潰す定着設計。僕が自社で置いている計器
ツール導入で最も多い失敗は「入れたのに使われない」です。導入相談で見てきた順番はいつも同じで、稟議を通す、人数分の席を契約する、配る、3ヶ月後に使っているのは2人。補助金が付くとこの順番はさらに加速します。自己負担が減るので、人数分を一気に入れる判断が通りやすくなるからです。
配る前に計器を置く
僕の会社では、配る前に「使われ方を数える計器」を置きます。専用ツールは使っていません。1行1イベントの追記型テキストファイルが2本あるだけです。
消費の台帳(usage.jsonl): 業務を1回回すごとに1行。日付・業務の識別子・生成した画像の枚数を書き足す。最初の行は2026年7月19日で、2026年9月14日時点で83行
成果の台帳(kpi.jsonl): 週に1行。公開本数と検索経由の表示・クリックの集計を書き足す。2026年9月14日時点で11行

83行と11行という数字そのものに価値はありません。価値があるのは「後から集計できる形で、その場で1行書く」という型のほうです。この型があるので、うちでは「使っているか」を聞いて回らなくても、どの業務が何回AIを通ったかが記録として残ります。
補助金の文脈で言えば、この計器は5番目の「定着設計を役務側に書く」の中身であり、6番目の効果報告の材料でもあります。自社で「どの業務が何回AIを通ったか」を数えていない会社は、報告の期限が来てから慌てて数字を探すことになります。

定着の判定は「1業務が人の努力なしで回り始めるまで」
「全社の利用率」を最初の指標に置くのは勧めません。使わないと決めた部署の未達が混ざって、数字の意味が消えるからです。僕が使っている判定は、1業務が人の努力なしで回り始めるまで。対象を1業務に絞り、その業務をやると必ずAIを通る経路を1本作り、計器を先に置く。設計の詳細はAI活用推進の設計と社員にAIを任せる基準に書きました。
①最初に載せる1業務の名前(帳票名・工程名で)、②その業務がAIを通った件数と差し戻し率を誰がどこに記録するか、③「人の努力なしで回っている」と判定する時期。この3点を持ち込むと、活用支援の見積もりが「訪問回数」ではなく「到達する状態」で書けます。
補助金を使わないほうがいい場合。締切に合わせて業務を曲げない線
補助金は自己負担を減らす手段であって、導入の目的ではありません。次の3つのどれかに当てはまるなら、僕は今回の締切は見送って自費で小さく始めるほうを勧めます。
締切に間に合わせるためにツールを選んでいる
9月29日に間に合う事業者と製品の組み合わせから逆算して選定している状態です。ツール選定の順番は「経営者が自分で1ヶ月使う、配る相手を決める、席数を決める」で、補助金はその後です。順番の詳細はClaude Codeの料金と法人導入の判断に書いています。
補助が付くプランに業務を合わせようとしている
必要なプランが登録外で、下位プランなら補助が付く、という状況です。補助金に合わせて業務を曲げると、浮いた自己負担より、使われない期間の損失のほうが大きくなります。補助対象外の分を自費で持つか、今回は見送るかの二択で、業務側を削る選択肢は最初から外します。
実績報告と効果報告の担当が置けない
通常枠5次なら、交付決定の2026年11月から事業実績報告期限の2027年4月末まで手続きが続き、効果報告はその後です。担当を置けない規模なら、補助金なしで最初の2週間を回すほうが早い場合があります。初動の組み方はAI導入の最初の2週間にまとめました。
よくある質問
事務局公式の「申請の対象となる方」(2026年9月14日確認)では、資本金・従業員規模の一方が業種ごとの基準以下の場合に対象で、「個人事業を含む」と明記されています。申請対象者チェッカーの組織形態にも「個人事業主、その他法人」の選択肢があります。最終的な要件は交付規程・公募要領で確認してください。
別の制度ではなく、同じ制度の名称変更です。中小企業庁の概要資料(令和8年4月)に「令和7年度補正予算事業から『デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)』と名称を変更」とあります。IT導入支援事業者との共同申請、登録済みITツールが対象、交付決定後に契約、という骨格は変わっていません。
事務局公式のスケジュール(2026年9月14日確認)では、通常枠・インボイス枠・セキュリティ対策推進枠の5次締切が2026年9月29日(火)17:00、交付決定が2026年11月9日(月)予定、事業実施期間が交付決定から2027年4月30日(金)17:00予定です。複数者連携枠は2026年10月30日(金)17:00締切です。6次以降の有無は公式のスケジュールページで確認してください。
製品名だけでは答えが出ません。対象は事務局に登録されたITツールで、どのIT導入支援事業者がどのプランで登録しているかで決まります。確認手順は、①事務局サイトの「ITツール検索」で製品名を引く、②登録があれば提供事業者とプラン・プロセス分類を見る、③自社が使いたいプランと一致するかを事業者に確認する、の3段階です。この記事では特定製品の可否を断定しません。
中小企業庁の概要資料(令和8年4月)に過年度の申請件数と採択件数が公表されています。IT導入補助金2025の通常枠は申請23,672件・採択8,936件、IT導入補助金2024の通常枠は申請25,140件・採択16,540件で、割り算すると2025は約38%、2024は約66%と年度で大きく変わります。2026年度の予測はこの記事では書きません。最新値は事務局サイトの「交付申請件数及び交付決定件数」のお知らせが一次情報です。
まとめ。公式で確認する手順と、社内で決めることの順番
制度は年度ごとに変わるので、この記事の数値は2026年9月時点の確認結果として読んでください。読んだ後にやることは2つです。
まず公式で確認する手順。
事務局サイトの「事業スケジュール」で、次の締切日と交付決定予定日を見る
「ITツール検索」で使いたい製品を引き、登録の有無・提供事業者・プランを見る
「資料ダウンロード」で該当枠の公募要領を開き、対象経費と対象外経費を読む
「交付決定後に必要な手続き」で、実績報告と効果報告の流れと期限を読む
次に社内で決める順番。財源、契約と申請の順番、IT導入支援事業者を通す前提、対象プランの線、定着設計、報告の担当。この6つが決まっていれば、事業者との初回打ち合わせは「補助金の説明を聞く場」ではなく「役務の中身を詰める場」になります。
補助金は自己負担を減らすだけで、使われるかどうかは申請前の社内の決め事で決まります。自社の業務に当てはめて6つを決める作業や、活用支援の役務に何を書くかの相談は、AI顧問サービスの内容を確認のうえお問い合わせからご連絡ください。
4番目の「対象プランの線」を決める前段として、誰が何に使っているかの棚卸しと「配る・配らない・後で」の席の配分、年間コストの試算までを記入式でまとめた「生成AI 契約プラン選定&年間コスト試算ワークシート」を無料で配布しています。補助金の見積もりを事業者に頼む前に、自社の席数と年額を先に固めるのに使えます。
出典
制度の名称・枠・補助率・補助額・対象経費・締切・手続きは、以下の公式資料を2026年9月14日(JST)に確認しました。「配る前に計器を置く」運用、台帳2本の行数、定着の判定基準、席が余る順番は、僕の自社運用の記録とAI顧問・受託で導入相談を受ける側の経験に基づく一次情報です。AIVESTは本補助金の申請代行を行っておらず、自社での申請実績もありません。本記事は採択を保証するものではありません。
デジタル化・AI導入補助金2026 事務局 トップページ https://it-shien.smrj.go.jp/ (制度名・「(旧:IT導入補助金)」表記・枠の一覧)
同 通常枠 https://it-shien.smrj.go.jp/applicant/subsidy/normal/ (補助率・補助額・対象経費・プロセス要件。更新日2026年8月28日)
同 事業スケジュール https://it-shien.smrj.go.jp/schedule/ (5次締切・交付決定予定日・事業実施期間)
同 交付決定後に必要な手続き https://it-shien.smrj.go.jp/aftergrantdecision/measures/ (交付決定前の発注・契約・支払いの扱い、事業実績報告・事業実施効果報告の流れ)
同 申請の対象となる方 https://it-shien.smrj.go.jp/applicant/subsidy/ (個人事業を含む対象者の範囲)
同 資料ダウンロード https://it-shien.smrj.go.jp/download/ (公募要領・各種マニュアル。事業実施効果報告マニュアルは2026年9月14日時点で「準備中」の表示だったため、効果報告の年数は本記事に記載していません)
中小企業庁「『デジタル化・AI導入補助金2026』の概要」令和8年4月 https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/r8/digital_ai_summary.pdf (名称変更・活用支援の対象経費・過年度の申請件数と採択件数)
中小企業庁「デジタル化・AI導入補助金2026の公募要領を公開しました」2026年3月10日 https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/hojyokin/kobo/2026/260310001.html (GビズIDの取得が必要)
厚生労働省「人材開発支援助成金」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html (研修側の財源)
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